今もなお色褪せることなく名作として語り継がれる 「GHOST」ウォレットチェーンの誕生秘話を改めてご覧いただければと思います。

※この対談は2013年6月7日に掲載した記事です。

Argent Gleam Designer : TAD

1992年にブランド『Argent Gleam』(アージェントグリーム)をスタート、市内にアトリエを構える。当時は国内にシルバーアクセサリーのブランドは少なくゴシックなデザインと繊細な仕上げで人気ブランドに成長。その後、シンプルかつ存在感のあるアクセサリーをコンセプトに『APPLIED(アプライド)』、ロック色強いエッジな作風の『LIQUID(リキッド)』とそれぞれコンセプトの異なるブランドを発表させる。今回の対談はデザイナーTAD氏の人間像、新作の『GHOST』ウォレットチェーンのコンセプトである『決別と再出発』の本当の意味。今なお愛されるケルト&コブラ1stの誕生秘話等あまり語られる事のない真実がここにあります!是非最後までお付き合い下さい。


-まず始めに『彫金の道に入ったきっかけは?』-

大学の時、尋常じゃないインパクトをもった先輩に一目惚れしたのがはじまり。ファッションも、バイクも、スタイル全てがパンクでメタルで、いちいち「カミナリが落ちたような衝撃」を受けてた(笑)。その先輩が自分で指輪やネックレスを作って着けたり売ったりしていて、「こんなの自分で作れるんだ!スゲェ!!」ってで、俺もたいがい天の邪鬼だから直接(作り方を)教わらず、コッソリ独学で勉強して出来たものを(突然)見せてた。とにかくなかなか「認めない」人だから、必死にその背中を追いかけて今に至るカンジです。  

-『日頃のデザインするにあたっての気をつけている所』-

「伝える」事に気をつけてる。それは、デザインだけじゃなくて、リリース時の見せ方やブログの記事とか見えるもの聞こえるもの全部。メッセージ/表現/技術/タイミングなどあらゆる事に気を使って、でも考えすぎて良くわからなくなって「バーン」みたいな感じ(笑)。  

-『自分でも雑食だと言う音楽との付き合い方や想い』-

音楽は雑食だけど、かなり偏食でもある。音楽以外すべてのコトに言えるけど「今、オマエがそれをやらなきゃいけない理由」が明確なものが好き。完成したモノ(コト)で「それ」を明確に伝えるのはすごく「経験と技術」がいる事で、だから、ものごとは場数と手数が大事。ロックのアルバムで言ったら1st、2ndの持つ衝動と刹那はやっぱり美しくカッコイイのよ、それはそれで認めるけど、やっぱり長くやってるアーティストを尊敬する。ジャンルの話なら、グランジ以降のアメリカのインディーロックが好き。UKはパンクもロックも苦手だけど、ジョン・レノンは別。「神聖かまってちゃん」を聞いてください。  

-『インスピレーションのネタは?』-

周りにいるカッコイイ先輩。幸せな事に、たくさんいる。そこから得たものに自分らしい「変態的」なエッセンスをふりかけてオリジナルにする(笑)。それ と、「雑誌」とか「CM(コマーシャル)」とか下世話な媒体がけっこう好きで、そういう俗物的なモノをアートに昇華したのがかっこいいと思う。ロック ミュージックやグラフィティー、TATTOOなど、ストリートから生まれるものがイイ。  

-『ウォレットチェーンに対する想いと自負について』-

ウチのウォレットチェーンに関しては完全なイメージの一人歩き。良くも悪くも「ケルトアンドコブラ」のワードはついてくる。でも、個人的な見解としては、 指輪やネックレスを着けても人の動きまでは変わらないけど、ウォレットチェーンは変わるでしょ。なんか、歩き方や姿勢が変わる。妙な束縛感もあるし、独立 したアイテムだよね。その(ウォレットチェーンの)アイデンティティーが好き。たくさん作りすぎて、俺自身、哲学入っちゃってるけど、あんまりヴィジュア ル寄りにならないよう気をつけます。「ただ、鉄(銀)の塊に跨がりたいだけ〜」な感覚を大事に行きたい。自負は、間違いなく日本で一番たくさんウォレット チェーンを産み出してるでしょ。この10年で、数えてないけど50型(ケルト、ルード、ロストコントロール、Black Signなど含め)以上は作ってると思う。考えると疲れるよ(笑)。  

-『ケルト&コブラ1stチェーン誕生秘話について』-

「名古屋つながり」で照井さんから制作依頼が来た。若気の至りから「ブランキーならロックとして申し分無い!」とロック魂むきだしで東京に行ったら、照井さんは全然ロックな感じを出してない。ハリラン(ハリウッド・ランチ・マーケット)みたいな服着てるし、、、今思うと、ブランキー解散の 1年前でロックに疲れてたのかもしれない。勝手な想像だけど(笑)。解散ライブ(Last Dance)にも呼んでもらったよ、めちゃくちゃカッコよかった!実制作は「デザインはシンプルだけど凶暴に、価格は10万以内。」そのへんは最初から決まってた。原型はほぼ一発OK。最初の1年はたいして売れなかった。やっぱり、ムラジュン(村上淳一)さんが着けて雑誌に出てからだね、本格的に売れだしたのは。ケルト1stは、照井さんの繊細さと俺の(ロックへの憧れの)熱さがちょうど良く混ざったデザイン的にも価格的にも「いい湯加減」の傑作だと(勝手に)思ってます。  

-『何故このタイミングでGHOSTなのか?』-

「GHOST」の解釈はそれぞれにお任せしますが、タイミング的なことを言ったら、震災があって「そのままを続けるか、先に進むか」をみんながちょっとは考えたと思い、今一度自分のスタイルを見直して「ゴーストになるか、ゴーストを振り払うか」ってコトです。

-『このコマの魅力について』-

コマは、ケルト&コブラのチェーンより少し小さく、全長も短めで「現代的」にアップデートされています。コマにつけられた溝(ライン)もArgent Gleamらしい表現だと思います。コマのシェイプに比べキャッチは更にゴツくなってる、その点がポイントでしょう。

-『エンドユーザーに対する想いを聴かせて下さい』-

大事なお金を使って買ってくれるわけだから、それは感謝していますし、感動します。ウチの商品にはときどきメッセージをのせています。ファッション以外の「何か」を感じてもらえたら最高のパートナーシップを築けると信じています。  

-『最後に今後の展開についての展望は?』- 

最近は、ファッション的にシルバーがあまりピックアップされなくなっていますが、TATTOOもそうだけど、シルバーも着けないヤツより着けてるヤツの方がお洒落であるコトは間違いないと思ってる。流行的に「オシャレ」とかじゃなくて、生き方が「お洒落」ってコトね。みんなが「お洒落」に生きて行くための商品を作り続けていきたいと思ってるので、チェックを怠らないように(笑)。今後ともよろしくお願いします。


TADさんありがとうございます!今回このような企画を思いついたのは、新作の『GHOST』ウォレットチェーンが仕上がった段階での半端じゃない衝撃。そしてデザイナー自ら発した『ケルトタイプ』という言葉への尊敬。その2つが同時に生まれた時、『あ、もっと深く聞いてみたい!』そう思ったのがきっかけです。少し前にTAD氏との会話の中でケルトのチェーンが話題に上がった時、『今やればもっといいものが出来る!』と言っていたのを覚えています。まさかそれが発売される日が来るとはその時は考えもしませんでした。私のシルバーアクセサリーへの情熱のきっかけを与えてくれたのも、TAD氏であり、TAD氏の作品です。間違いなくこれからも多くの人を魅了していくことでしょう。そしてその架け橋でありた続けたいと強く願っています!


惜しまれながらも今年で廃盤が決定いたしました。
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